2025年度山口県芸術文化振興奨励賞を受賞された穴見めぐみさんにインタビューしました。作品制作の原動力や郷土への思いについてお話を伺いました。
穴見めぐみさんのプロフィール
山口県下関市出身。2016年映画『八重子のハミング』(監督佐々部清)で映画全編の音楽の作曲、劇中ピアノを担当。県内の学校の校歌や応援歌の作曲、創作オペラ、合唱曲など幅広いジャンルの作曲を手掛けている。山口県の童謡詩人金子みすゞの詩で歌曲を書き続けており、多くの声楽家によってCDに収録され、コンサートで歌われている。下関で開催を続けているNPO法人抱樸支援ひまわりチャリティコンサートは2023年に10回目を迎えた。ピアニストとして近年、狂言風オペラ特別公演「魔王」の出演やシューマン作曲「詩人の恋」の全曲演奏など新たな活動を展開している。
受賞について
- Q:山口県芸術文化振興奨励賞を受賞されてのご感想をお聞かせください。
- A:この度は栄えある賞を賜り、誠に光栄に存じます。これまでご指導くださった先生方をはじめ、多くの皆様に温かいご支援を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。
創作活動について
- Q:穴見さんにとって、作曲等の音楽創作やピアニストとしての演奏の魅力とは何ですか?
- A:作曲活動は、実際に音になるまでは、ほとんど一人で行う孤独な作業です。決して短くはない時間を、目の前の音楽と向き合いながら過ごしますが、行き詰まることも少なくありません。演奏も、日々の練習では作曲と同じように地道な作業の連続ですが、それまで頭の中で描いてきた音楽が、実際の音として立ち上がる瞬間には、すべてが報われるような思いがします。本番のステージに立つと、それまでとはまったく異なる空気感の中で演奏できる喜びもあり、その瞬間が何より特別に感じられます。終わってみれば、それはほんの一瞬の出来事ですが、その一瞬の輝きと儚さこそが、音楽の最大の魅力なのかもしれません。
- Q:山口県の童謡詩人、金子みすゞの詩で歌曲を書き続けていますが、そのきっかけは何ですか?また、それがご自身のキャリアにどのような影響を与えていますか?
- A:大学進学を機に上京してから、気がつけば20年以上の月日が流れました。故郷を離れて暮らす中で、ふと無性に故郷が恋しくなることがあり、いつか音楽を通じて何かしら故郷とつながることができれば――そんな漠然とした想いを抱くようになりました。
そんな時、長門市出身で晩年を下関で過ごした金子みすゞの詩と出会い、「彼女の詩に曲をつけてみたい」と思ったことが、創作のきっかけとなりました。
みすゞの詩から学ぶことは今でも本当に多く、その世界観は非常に大きく、繊細な深みをもっています。音楽を書くときも、みすゞの詩の持つ世界観を常に意識しており、彼女の言葉に触れることで、自分自身の音楽の幅も広がってきたと感じています。

(2023年 下関生涯学習プラザ海のホール)
山口県について
- Q:山口県を舞台とする映画音楽や県内学校の校歌、応援歌を作曲されたり、ご出身の下関市では継続してチャリティーコンサートを行われたりしていますが、故郷への思いを教えてください。
- A:故郷で音楽のお仕事をさせていただけることは、私にとって本当に幸せなことです。
幼少期に山口で過ごした時間は、今でも私の大切な宝物であり、おこがましいかもしれませんが、音楽を通じて少しでも故郷に恩返しができたらという思いがあります。
けれど、実際にはいつも私の方が、皆さんからたくさんの力をいただいています。これからも山口の皆さんと一緒に、音楽を通して幸せな時間を共有していけたら嬉しいです。
未来について
- Q:今後の目標や抱負を教えてください。
- A:合唱作品や歌に関わる作品づくりは、これからも継続して取り組んでいきたいと考えています。また、金子みすゞに加えて、中原中也など他の詩人の作品にも挑戦してみたいという思いがあります。「歌」という枠組みにとらわれずより自由な表現にも取り組んでいきたいですし、もし機会に恵まれるなら、オペラのような大きな作品にも挑戦してみたい、という夢も抱いています。今年の11月29日には、下関で継続して開催しているチャリティコンサートを開催予定です。音楽がお好きな方はもちろん、初めてクラシックに触れる方にも楽しんでいただけるプログラムを準備していますので、どうぞお気軽に足をお運びください!
- Q:最後に、山口県の若いアーティストに向けてアドバイスや応援のメッセージをお願いします。
- A:長年にわたって一つのことを続けていくのは、根気のいる作業ですし、ときには気持ちが追いつかず、立ち止まりたくなることもあるかもしれません。それでも、私自身、気がつけば何十年も音楽の道を歩み続けてきました。そして、その道中には、数えきれないほどの大切な出会いがあり、多くの方々に支えられて、ここまで来ることができたと感じています。若い方には、ぜひ「諦めずに続けること」を大切にしていただきたいと思います。努力はきっと、誰かが見てくれていますし、その積み重ねが未来につながっていくはずです。私自身も、これから若い皆さんと一緒に何か新しいことに取り組める日を、心から楽しみにしています!